前立腺肥大症・尿と病気

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前立腺肥大症


前立腺肥大症/尿と病気


     
§1  前立腺肥大症とは/前立腺肥大症/尿と病気


       前立腺は男性ホルモンの支配を受ける、ちょうど栗の実のような形状の臓器です。大きさは普通3cm前後、

       約15gで 尿道の周囲を取り巻く外側の前立腺組織(外腺)と尿道周囲腺(内腺)でなっており、尿道はその

       真ん中を貫通しています。前立腺肥大症という病気は、前立腺の一部が肥大腺腫状態になることにより尿

       道を締め付ける事になり、
排尿障害が起きてきます。尿の出る勢いが弱くなってくる、 いつまでもチョロチョ

       ロと出る、 尿が残っている感じがする(残尿感)特に夜間の排尿回数が増える(頻尿)、 尿が全くでなくなる

       (尿閉
などが病気の症状です。尿に血が混じる事があります。前立腺炎の場合は排尿時痛、排尿後の不

       快感、頻尿
、.から.部にかけての不快な重圧感、 腰や大腿部の鈍痛などがあり、急性なら発熱を

       も伴います。 前立腺の肥大は従来は、 少しずつ進行するものと思われておりましたが、 長期観察の結果、

       近年では60〜70歳頃の時期に 比較的短期に肥大は進行し、 その後は、あまり変動しないのではないか

       と考えられる様になってきております。 病因は、明確ではないものの、加齢と男性ホルモンは大きな要因と

       考えられております。 (前立腺癌の場合は初期無症状の場合が多く、 進行すれば
排尿困難、排尿力減退、

       頻尿尿閉
などの症状を伴います。)


       前立腺肥大症の血尿は尿の後半に見られることがあります。健常な人には尿中には血液は殆ど見られませ

       ん。
血尿は尿を造る排出ルートに出血が生じているサインになります。但し、血尿には肉眼で明らかに分かる

       
肉眼的血尿と顕微鏡検査で判明する顕微鏡的血尿が有りますが、 肉眼的血尿の場合は尿の出始めなのか、

       出終わりなのかを観察しておく必要があります。 (前立腺肥大症は膀胱や上部尿路にも障害をきたす事があ

       ります。)








     
§2  前立腺の検査、診断/前立腺肥大症/尿と病気


       PSA直腸診超音波断層検査前立腺生検残尿測定尿流率測定排尿筋圧・尿流率同時測定などが

       あります。 前立腺肥大症は良性の疾患で、症状は多彩です。また、前立腺の重症度は症状や腫大の程度、

       尿道閉塞の程度などと必ずしも一致しません。 従いまして、 治療は近年発表されました症状スコアQOL

       スコア最大尿流量、 前立腺の容積の各領域毎の検査結果で重症度を判定し、方向性を決定します。これ

       らの評価と関係なく、 尿閉を繰り返したり、 尿路感染症膀胱結石症、腎不全などを併発していれば、重篤

       症例となります。 ただし、治療に際して、 患者さんの困窮度、治療への希望などもあり、治療方針の決定に

       際しては、充分に担当医への相談も重要になります。


      §2−1  直腸診/前立腺検査/尿と病気


       
直腸診は.から指を挿入して、直腸の

直ぐ上にある前立腺を直腸ごしに触れる

感覚で触診するもので、正常であれば滑

らかで、弾力があります。 安全で重要な

検査です。


       



正常な前立腺は中央部に溝のような感

覚を触知できます。これが前立腺肥大

症になりますと、この溝は判り難くなり

ます。 前立腺癌の場合には不均一な

凹凸と 石の様な硬さを感じる様になり

ます。 前立腺の大きさ、形態、硬結の

有無、 問題の部位の 広がりを推定し、

右図の様に記載します。


硬結などは前立腺肥大症、前立腺癌、慢性前立腺炎、前立腺結石などの可能性があり、鑑別など難し

い問題がありますが、簡便で安全であるという優れた長所があります。血清PSA値や経直腸的超音波

検査などと組み合わせ、鑑別に対応します。









     
 §2−2  超音波断層検査/前立腺検査/尿と病気


       
経腹的超音波断層検査;膀胱に尿を溜めた状態で、プローブを下腹部に当てて、前立腺の様子を確認するも

       ので、前立腺肥大の状況や、膀胱癌、膀胱結石などの確認ができます。経直腸的超音波検査などより簡便な

       ため、より選択されております。




       
経直腸的超音波検査;膀胱に尿を溜めた状態で、専用のプローブを.から直腸に挿入し、前立腺の様子を

       確認します。経腹的超音波検査よりも、より患部に近いためより正確な情報を得る事が出来る利点があります。

       ただし、患者さんは直接.からプローブを挿入されますので、多少の不快感や痛みを感じる事になります。








     
 §2−3  前立腺生検/前立腺検査/尿と病気


       直腸診、超音波検査、PSAなどにより前立腺癌が疑われた場合には、組織学的検査すなわち前立腺の生検

       を行います。 前立腺生検は、治療法の決定や予後の経過推測に極めて重要な検査になります。 多くの場合

       には、穿刺によるバイオプシーガン(針生検)が選択されます。穿刺方法は経直腸式と経.式があります。



       
経直腸式前立腺生検;術前に直腸内の消毒をし、食事は残渣の少ない食事にし、更に術前浣腸を行います。

       直腸から前立腺を触知しながら挿入して、生検します。 病変が直腸側に有る場合には、本法は容易に施行

       できるため、極めて有用になります。但し、直腸内の細菌による検査後感染には十分な注意が必要になりま

       す。生検針が尿道や膀胱を穿刺する可能性があるため、検査後は排尿中に血尿の存在の確認をします。肉

       眼的血尿が確認されれば、尿道留置カテーテルを置き、止血薬を投与して、処置する事になります。



       
経.式前立腺生検;超音波ガイド下の生検は、直腸に超音波プローブを挿入して、前立腺を確認しながら、

       .から生検針を穿刺して、病変部位の生検を行います。生検針が尿道や膀胱を穿刺する可能性があるた

       め、検査後は排尿中に血尿の存在の確認をします。肉眼的血尿が確認されれば、尿道留置カテーテルを置

       き、止血薬を投与して、処置する事になります。






     
§3  前立腺肥大症の症状/前立腺肥大症/尿と病気


       病気の症状は1〜3期、1〜4期と考え方により、異なる病気分類をしていますがここでは、概ね3期に分類す

       る考え方を御紹介します。(進行程度が、把握できます。)


       
T期:結節は小さいが排尿の回数は多く(頻尿)、尿の勢いが弱い(尿勢低下)。刺激期で膀胱及び尿道が刺

       激されるため.部の不快感、
夜間頻尿、軽度排尿困難を訴求。薬による治療が可能。


       
U期:結節性腫瘤は中等度、尿道への圧迫が強く、尿が出にくくなる出ても膀胱に尿が残る(尿閉・残尿)排

       尿困難は増強し、しばしば途絶、残尿は増える。排尿まで時間が掛かり、終了も時間が掛かる。 腹圧が必要

       で残尿感、頻尿が強く
、このステージ後半から手術治療適用となります。



V期完全尿閉期、排尿は滴下状態〜完全

尿閉
へと進行します。尿道は閉塞状態にな

り、
自己排尿は困難。酷ければ尿毒症にな

ります。
残尿量は300〜400mlとなり残尿

は更に増加すると 膀胱排尿筋の働きでは

排尿できず、尿も少量ずつ漏れる
。薬物療

法と手術療法があります。
薬物療法は植物製剤と、漢方製剤、抗男性ホルモン薬、前立腺部の尿道を緩めて尿の出をよくするα遮断

薬などがあります。手術療法は、経尿道的前立腺切除術などがあります。






     
§4  国際前立腺症状スコア/前立腺肥大症/尿と病気



       前立腺肥大症では尿道周囲の移行域と呼ばれる領域からの発生であるのに対して、前立腺癌はその3/4

       が周辺域と呼ばれる領域によるもののため 前立腺癌がよほど大きくならないと症状が出難いためとされま

       す。 然しながら残りの1/4は移行域から発生する事や、前立腺癌に前立腺肥大症が合併する事が有り得

       るために、前立腺癌と前立腺肥大症を判別する事は不可能となる。 そこで近年代表的な症状の評価方法

       が国際的な基準によりスコア化されました。  0〜7点/正常or軽症 8〜19点/中等症  20〜35点/重症

       治療の目安は概ね、軽症は経過観察、中等症が薬物療法、重症が手術療法となります。




なし 5回に1回未満 2回に1回未満 2回に1回位 2回に1回以上 殆どいつも
@排尿後に尿がまだ残っている感じがあるか
A排尿後2時間以内にもう一度行かねばならない事があるか
B排尿途中に尿が途切れる事があるか
C排尿を我慢するのが辛い事があるか
D尿の勢いが弱いことがあるか
E排尿開始時に息む必要があるか
0回 1回 2回 3回 4回 5回
F床に就いてから朝起きるまで普通何回排尿に起きますか
                                                                    by I-PSS




       前立腺癌が進展すれば排尿症状のみならず血尿や凝血塊により尿閉を来たすなどの症状が出現します。

       更に進行すれば水腎症を呈する事にもなります。前立腺癌が遠隔転移すれば転移し易い骨(特に腰椎)か

       らの痛み腰痛が発現します。場合により前立腺癌の初期症状として腰痛が発現する事もあります。骨盤内

       リンパ節転移により下肢の浮腫を来たしたり、骨転移により下肢麻痺も発現する事もあります。





     
§5  前立腺肥大症の治療/前立腺肥大症/尿と病気


       前立腺肥大症の治療には薬物療法と手術療法があります。



薬物療法;前立腺にある交感神経のα1受容体

に作用するα1遮断薬は、 前立腺部尿道の閉

塞を 機能的に解除させる前立腺肥大症に対し

て、最も有効性の高い薬剤です。その他、前立

腺の縮小を目的として使用されるものに、抗男

性ホルモン剤や、 抗炎症抗浮腫作用を目的と

して使用されるアミノ酸製剤、植物エキス製剤、

漢方薬などがあります。



       
手術療法;標準的な術式として、経尿道的前立腺切除術があります。本方式は尿道より、切除鏡を挿入し、電

       気メスで腫大した患部を切除します。手術に用います灌流液の体内に流入して起きるTUR反応(水中毒)では、

       合併症として電解質を含まない灌流液が静脈の断端を介して吸収されてしまう事により、電解質の不均衡が原

       因と考えられる低ナトリウム血症や循環血液量の急増などのために、あくび、冷汗、徐脈、血圧低下、悪心、嘔

       吐などを惹起します。前立腺が著しく腫大している、膀胱結石・膀胱憩室を合併しているケースなどでは開放手

       術(前立腺被膜下敵徐術)が選択されます。 また、 低侵襲治療としてマイクロ波や超音波を利用して前立腺を

       加温する高温度療法、経尿道的に前立腺に レーザーを照射して腺腫を縮小する目的で前立腺レーザー療法

       やその他、高周波電流で前立腺組織を蒸散する経尿道的前立腺電気蒸散術、 排尿状態を改善する尿道ステ

       ント留置などが有りますが、 経尿道的前立腺切除術よりは有効性が劣る。外科的な治療が出来ないケースで

       は、間欠的自己導尿、尿道留置カテーテルなどが適応となります。










       
* PSA/前立腺特異抗原(prostate specific antigen)


前立腺癌の診断は前立腺上皮から血液中に分泌される蛋白

分解酵素のPSA(前立腺特異抗原)が腫瘍マーカーとして用

いられますが正常前立腺にも存在し、血中前立腺肥大症でも

上昇を確認する。正常値は4ng/ml、4〜10ng/mlはグレーゾ

ーン、10ng/mlより上は要注意域とされます。
前立腺癌及び前立腺肥大症にお
けるPSA陽性率(USA例) ng/ml
<
4.0
4.01〜
10.0
>
10.01
陽性
%
陽性
%
陽性
%
前立腺癌 19 14 67
stageA 37 33 30
stageB 29 21 50
stageC 19 9 72
stageD 12 9 79
前立腺肥
大症
80 18 2
健常男性 99 1 0


      
* 前立腺肥大症の領域別重症度判定基準

1 症状 2 QOL 3 機能 4 形態
I-PSS QOLスコア  最大尿流量        残尿量 前立腺容積
軽症 0〜7 0・1  ≧15mL/秒   かつ    < 50mL   <20mL
中等症 8〜19 2・3・4  ≧ 5mL/秒   かつ    <100mL   <50mL
重症 20〜35 5・6  < 5mL/秒   または    ≧100mL   ≧50mL


       
* QOLスコア

大変満足 満足 大体満足 どちらでも無い 不満気味 不満 大変不満
*1 質問内容

       *1 質問内容;現在の排尿状態が、今後一生続くとしたらどう感じますか?






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