腹圧性尿失禁・尿と病気

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腹圧性尿失禁


腹圧性尿失禁/尿と病気


     
§1  腹圧性尿失禁とは/腹圧性尿失禁/尿と病気


      
腹圧性尿失禁は、お腹にわずかな腹圧がかかっただけで、尿が漏れる状態をいいます。50歳までの女性の

      尿失禁率は30〜40%に達するとされ、腹圧性尿失禁切迫性尿失禁混合性尿失禁=5:2:3と報告されて

      おります。ご覧の様に腹圧性尿失禁は高い比率になっておりますが、それが、若い女性の尿失禁有病率に大

      きく影響を与えております。咳・クシャミ・スポーツ・歩行・走行、重い物を持ち上げる、 階段を上がる、急に走り

      出すなどで尿失禁します。











     
§2  腹圧性尿失禁の原因/腹圧性尿失禁/尿と病気


       腹圧性尿失禁は女性の骨盤底の構造的な問題、分娩(出産時の損傷は最大の原因と考えられており数十

       年後の閉経後の身体の変化で更に症状は出易くなります。)、加齢、女性ホルモンの減少、便秘に伴なう骨

       盤底筋群などの緩みや、 膀胱と尿道の力のかかり具合がアンバランスになるなどが原因で起こります。肥

       満気味の人にも起きます。 尿道を支える結合組織が緩み、腹圧負荷時に尿道が前膣壁と共に、後下方へ

       動く、尿道過可動で、開いて漏れるという症状が出現します。 尿道括約筋不全/ISD(括約筋機能自体の脆

       弱化)
も原因の一つになります。この様に近年では、腹圧性尿失禁は、尿道過可動とISDが混在したもので

       あるとの見解の方向性です。

骨盤底とは 骨盤の最下部にある強靭な

膜を指し、膀胱、子宮、直腸は骨盤内臓

器と称されており、 これらの臓器を支え

ております。骨盤底が弛みますと、尿漏

れや.脱の原因になります。 この中

で尿に関係するものには、 尿移動の周

りにある括約筋です。この横紋筋である

括約筋には、 「内尿道括約筋」(弱い内

側の筋肉) と 「
外尿道括約筋」(強い外

側の筋肉)があります。これらは尿道〜

膣、 尿道〜膣〜直腸と締め付ける役割

を果たします。 女性の尿道周囲はこの

様に、 複雑な構造、 働きがありますが、

女性の括約筋は構造的にも男性に比し

て、薄く、膀胱頚部や尿道括約筋のどち

らが傷ついても、尿が漏れます。


この骨盤底は、内骨盤筋膜、骨盤隔膜、.膜で構成されております。内骨盤筋膜は骨盤底の一番上に

ある筋膜で、靭帯などの線維性組織でできております。 この筋膜は子宮や膀胱などを骨盤底に固定する

役割を果たします。更に、血管や神経の通路でもありますが、骨盤内臓器を支えるほどの強い力はありま

せん。


骨盤隔膜は骨盤底筋群の中で最も強い、中心的な役割を果たしております。骨盤底の真ん中にあり、恥骨

から尾骨にかけ、直腸や膣、尿道をしっかり固定しております。この筋肉は横紋筋で出来ており、随意筋で

す。従いまして、骨盤隔膜は鍛える事が出来る筋肉です。


.膜は尿道の中ほどを支え、膣を支持する、骨盤底の一番下に位置する膜です。臓器を支えるのでは有

りません。 むしろ骨盤隔膜を下から支えております。内外の尿道括約筋が含まれ、この膜も鍛える事ができ

ます。



骨盤底が弛むのは、出産と女性ホルモンの減少(閉経)が上げられております。他にも便秘で、長期に亘っ

て息みを続ける事は、即ち小出産を繰り返すようなもので、 腸が膣から出てくる腸脱の原因にもなっており

ます。便秘の予防をするためには乳酸菌を摂る、水分を摂る、食物繊維を摂る、運動をするなどを心がけた

いものです。
 骨盤底メモもご参考にご覧下さい)




     
§3  腹圧性尿失禁の検査/腹圧性尿失禁/尿と病気


       
検査は問診、ストレステスト、パッドテスト、膀胱造影検査、膀胱内圧測定などがあります



       
問診;咳・クシャミ・スポーツ・歩行・走行などで尿失禁が無いかの確認により、かなりの見当がつきます。尿

       失禁の頻度や重症度、パッド使用、日常生活への支障などで、治療方針が決められます。 腹圧性尿失禁

       は文字通り腹圧がかかる負荷に伴ない、失禁するものですが、尿が溜まれば漏れ易いために、早めにトイ

       レに行く習慣ができ、頻尿の様な度合いの状況になる。混合性尿失禁の場合には、腹圧性と切迫性の割合

       が確かめられます。




       
ストレステスト;咳やいきみで尿が流出するのかを診断するもので、骨盤臓器脱、萎縮性膣炎、膀胱膣瘻など

       も確認します。 尿の溜まった状態で、診察台の上でテストを行います。咳から一呼吸遅れて流出する場合に

       は、切迫性尿失禁(偽腹圧性尿失禁)が疑われます。(切迫性尿失禁はこのケースでは、咳で膀胱の不随意

       収縮が誘発されたためと考えられます。)



       
パッドテスト;排尿をしない状態で、水500mlを15分以内でのみ終え、椅子あるいはベッド上で安静を保ちま

       す。 その後、30分間歩行し続ける・椅子に座る・立ち上がるを繰り返すなど、一連の尿失禁を誘発する動作

       の後、パッドの重量の変化を軽量し、失禁量を確認します。この計量ではその時の尿の貯留量や、体調など

       で数値はばらつきますが、重症度の把握の目安になります。 その他、一定容量パッドテスト、24時間パッド

       テストなども行われます。



       
膀胱造影検査;尿道に細い金属鎖を挿入し、女性尿道、膀胱頸部の動きを正面・側面像で、(安静時・腹圧負

       荷時)確認します。



       
膀胱内圧測定;最大膀胱容量に達した段階で、いきみ・咳などで上昇する腹圧に伴ない、(排尿筋の収縮を伴

       なわず)尿失禁が起きれば、尿流動態性腹圧性尿失禁と確認できますが、それは透視下膀胱内圧測定で行

       う事により、確認しやすく、情報量も多く得られます(ビデオ尿流動態検査)。


       一方、腹圧下尿漏出圧は尿失禁を起こすのに、最低の膀胱内圧を確認するもので、その圧が低いほど尿道括

       約筋不全(ISD/括約筋機能自体の脆弱化)の要素が強く、重症であるといえます。判定に当たり、膀胱の不随

       意収縮、膀胱容量が小さい場合などは、切迫性尿失禁の可能性が高い事も考えられるため、手術適応は慎重

       に選択される事になります。








     
§4  腹圧性尿失禁の治療/腹圧性尿失禁/尿と病気


      
§4−1  理学療法/腹圧性尿失禁の治療/腹圧性尿失禁/尿と病気


        
腹圧性尿失禁を理由に、運動などを避けると、更に肥満や筋力低下に繋がり、良い結果をもたらしません。

        パッドを装着しても運動を続ける様に努力する必要があります。基本的には骨盤底への負担を減らすため

        にも、減量、禁煙、便秘、呼吸器疾患への予防・配慮、矯正下着などで腹部を締め付けない様に心がける

        などに努めなければなりません。 骨盤底筋群の訓練のために、多種多様な方法が薦められております。

        重要なのは骨盤底筋群の訓練のために、まず確実に、該当筋を訓練する事は絶対原則です。即ち、骨盤

        底筋群の訓練のつもりで、間違って殿筋、腹筋をかけたり、腹圧をかけている人がおります。薦められてい

        る方法の一つでは、風呂で左手をお腹に、 右手の2本の指を膣の中に挿入し、骨盤底筋群が正しく収縮で

        きるかチェックする骨盤底筋訓練アセスメントです。 この方法に抵抗がある場合には、 .に指を当てて、

        外.括約筋の収縮を確かめる方法もあります。 これにより、働かせるべき筋群が自覚出来る様になりま

        す。また、一回数秒(徐々に10秒位まで保つ)の収縮を1日50回実施し、1日1回の排尿中断をする事を薦

        めております。これは、骨盤底筋群の収縮、弛緩を毎日繰り返して行うもので、脆弱化した筋群の強化と腹

        圧負荷時に筋群を随意収縮できる様に習熟する事により、腹圧性尿失禁を改善する事につなげます。その

        他、筋電図利用バイオフィードバック、電気刺激療法、磁気刺激療法などがあります。











      
§4−2  薬物療法/腹圧性尿失禁の治療/腹圧性尿失禁/尿と病気


        薬物療法は、骨盤底筋訓練が奏功するまでの、補完的な繋ぎ目的で使用する程度に留めるべきであると

        考えられています。交感神経β2刺激薬(外尿道括約筋/横紋筋の収縮増強)、三環系抗鬱薬(塩酸エフェ

        ドリン/交感神経α刺激作用による尿道平滑筋の収縮)/閉経後(萎縮性膣炎を伴なう様な症例など)、エ

        ストロゲンが尿道粘膜の萎縮改善、α受容数増加のためとされるが、有効性に異論がある。抗コリン薬は

        本来、 切迫性尿失禁の治療薬ですが、膀胱の収縮を抑えて、漏れを減らします。腹圧性尿失禁に、切迫

        性尿失禁が混じっている混合性尿失禁の場合に、比較的効果があるとされます。 これは、完全に尿道の

        弛みだけが原因の腹圧性尿失禁の場合には、効果があまりありません。エフェドリンは膀胱出口、尿道の

        抵抗を高める作用をします。(血圧が上昇しますので高血圧の人には要注意です。使用できる人は限られ

        てきます。)









      §4−3  手術療法/腹圧性尿失禁の治療/腹圧性尿失禁/尿と病気



        
TVT手術、TOT手術など150以上の多くの術式があります。TVT、TOT手術は中部尿道スリング手術で

        インテグラル理論に基づき、中部尿道をポリプロピレンメッシュのテープで支える考え方です。TOTはTV

        Tの改良型で、TVT手術の恥骨後式アプローチに比べて、 膀胱誤穿刺、腸管損傷が回避できるという利

        点を持つとされております。この中部尿道スリング手術は、低侵襲性で安定した長期成績(5年での治癒

        率85%、改善10%)を示す。これにより軽症例にも適用し易い状況になったとされます。手術は寝たまま

        の姿勢で、ゆるめに尿道周囲にテープを通します。


        コラーゲン注入法は、術前にコラーゲンのアレルギーテストで確認の後、尿道周囲にコラーゲンを注入し

        て膨らませる事により、尿も漏れを防ぎます。この方法は繰り返し注入可能ですが、欠点としては、時間の

        経過と共に、コラーゲンが体内に吸収されてしまいます。入れすぎた場合には、尿が出にくくなります。







      §4−4  その他/腹圧性尿失禁の治療/腹圧性尿失禁/尿と病気



       
§4−4−1 尿道周囲注入法/腹圧性尿失禁の治療/腹圧性尿失禁/尿と病気  


        
尿道周囲注入法(尿道周囲に牛コラーゲン注入し、尿道粘膜の密着性を改善する方法)、器具(膀胱頸部

        支持装置など)を利用する方法が有りますが、現況では入手が難しい。





       
§4−4−2 体操療法/腹圧性尿失禁の治療/腹圧性尿失禁/尿と病気  

        骨盤底筋群の位置を確認しておきましょう。(力を入れる部位を間違えない様に注意して下さい。排尿中にお

        しっこを止める時に使う筋肉が骨盤底筋です。 排尿中に何度も止める事は、なさらないで下さい。膀胱炎の

        原因になります。その他にも、おならを我慢する時の筋肉なども同じです。即ち、尿や便を内側に留めようと

        する筋肉が骨盤底筋です。膣に指を入れて確認する事もできます。指は勿論清潔にしてから、確認しましょ

        う。その際に、尿道を占める間隔で、指に締め上げる感覚があれば、それこそ骨盤底筋が指を締めている証

        拠です。)


        
体操療法T

        1 低めの机に両手をおきます。(両手を置くと中腰になる程度の高さのもの)

        2 両手両膝は伸ばし力を抜いてリラックスし、腰を引き上げるような格好をします。

        3 膣を引き上げる運動(骨盤底筋群強化)を10秒間、一日に100回行います。


        
体操療法U

        1 仰向けに寝て、足を肩幅に広げ、両膝をたてます

        2 下腹部に力を入れて、.や膣をグッと引き上げる様にします。ゆっくり5回行ったら、テンポを早め、10

        〜20回行います。同様の動作を椅子に座って行っても可能です。


        尿道の緊張を高める薬物療法や、膀胱と尿道を吊り上げる手術療法もあります。


        
ケーゲル・エクササイズ

        1 仰向けに寝て、足を肩幅に広げ、両膝をたてます

        2 腰は浮かせず、動かさず、床面に付け、深呼吸をしながら、骨盤底筋を締めます。1回8〜10秒、その後

        1分休憩します。これを10回以上繰り返します。



        
* 骨盤底筋体操;腹圧性尿失禁は 多産、難産、肥満、便秘の女性に多い事が知られております。その腹圧

        性尿失禁が6割以上治るとしている、「椅子に座って出来る骨盤底筋体操」が紹介されております。

        1 椅子に楽に座って、床につけた足を肩幅に開く

        2 背中を真っ直ぐに伸ばし、顔を正面に向け、肩の力を抜きます。

        3 お腹に力が入らない様にし、.と膣を5秒間締めたり、緩めたりする事を1日100回以上、3ヶ月間実施

        する。




        
* 機能性尿失禁;排尿機能には問題が無い(過活動膀胱、脳梗塞、神経因性膀胱、前立腺肥大症、麻痺

        なども無い)のに、尿が漏れる状態。 排尿は @尿意を感じるAトイレの有る場所に行くB下着を下ろすC

        排尿する D紙でふく E水で流すF下着を戻すG部屋にもどるなどの一連の動作を行う機能が必要です。

        その中の特定の一つを出来ないために尿漏れを起こします。周囲のケア(リハビリの継続、筋力と活動性

        の回復、早めにトイレに行くなど)も大切になります。






       
§4−4−3 食事、運動など/腹圧性尿失禁の治療/腹圧性尿失禁/尿と病気  


        肥満は骨盤底筋群の弛みを助長しますので、肥満にならない様に留意します。刺激物やカフェイン、アルコ

        ール、塩分、糖分の摂取は控えめに心がけます。良質の蛋白質を摂取し、水泳やウォーキングなどの無理

        の無い、身体に合う全身運動などに心がけます。










     
* 骨盤底メモ;骨盤底は妊娠前は正常の厚みですが、妊娠中にはホルモンの働きで、お腹や腰周りの筋肉は弱

     くなり、お腹が大きくなるほど、骨盤底は弛んできます。臨月に近づくほど骨盤底には負荷が大きくなります。膀胱

     が赤ちゃんの頭で圧迫されたりしますと、腹圧時に尿漏れも起こります。 尿失禁は妊婦さんの3割くらいに起きて

     おりますが、分娩後には9割以上の方は治ります。出産時には、やはりホルモンの働きにより、子宮口も骨盤底も

     柔らかくなります。 この時、子宮口が充分に広がっていないのに出産の進行が速すぎると、骨盤底に傷が入る事

     もあります。 また、出産に時間がかかりすぎても、骨盤底が伸びすぎてしまいます。出産を終え、直後から2ヶ月

     位の間に、子宮と骨盤底は縮小して、妊娠前の状態に戻ろうとします。 この期間も、尿道の周りの筋肉が支え切

     れずに、尿失禁を起こす事があります。この頃に無理な力が加わりますと、骨盤底は更に弛んでしまい、将来、子

     宮脱や 膀胱瘤などの原因を作ってしまう事になりかねません。 出産直後は尿道の痛みや筋肉の痛みのために、

     一時的に尿閉状態になる方もおります。産後2〜3ヶ月で尿失禁のあった方も元に戻ります。その後、産後6〜8

     週間以降は子宮も元も大きさに戻ります。











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