IgA腎症・尿と病気

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IgA腎症


IgA腎症/尿と病気


     
§1  IgA腎症とは/IgA腎症/尿と病気


      
日本人の男性に非常に多い腎症にIgA腎症があります。IgAは免疫グロブリンであり、メサンギウム細胞を

      中心(時に糸球体毛細血管壁)に沈着して炎症を起こします。 (下図を御参考にご覧下さい)IgA腎症は慢

      性糸球体腎炎の一種です。日本人の原発性慢性糸球体腎炎の患者さんの30〜40%はIgA腎症だと考え

      られております。IgA腎症の30〜40%方が慢性腎不全に移行すると考えられております。(透析療法に至

      るケースが多い) IgAは腸管、 気道上皮、授乳期乳腺、唾液腺、涙腺などの外分泌組織から分泌され、上

      皮細胞に細菌や毒素が結合したり、 異物が吸着するのを防ぐ働きや、 種々の病原体に対しての防御機能

      を示します。


     
ネフローゼ症候群
原発性糸球体疾患 全身性疾患に伴なう糸球体疾患 遺伝性糸球体疾患
微小変化 ループス腎炎 先天性ネフローゼ症候群
巣状糸球体硬化症 シェーンライン-ヘノッホ病性腎炎 アルポート症候群
膜性増殖性糸球体腎炎 その他 その他
膜性腎症
IgA腎症
その他



           -糸球体・機能模式図-






     
§2  IgA腎症の症状/IgA腎症/尿と病気


       初期自覚症状は希薄〜無症状で、 軽度〜中等度の
蛋白尿が出る、顕微鏡的血尿、血中IgA濃度(血清IgA)

       が高い程度で、検査を受けなければ発見できない程度の症状です。 それでも、急性扁桃炎に罹った後に、肉

       眼的血尿で発見できる時や、検尿時に肉眼的血尿は10〜15%程度、急性の腎炎症候群として10%程度発

       見される事もあります。 多くのケースでは、顕微鏡的血尿をきっかけに発見されます。血尿の程度は、上気道

       感染後に悪化したりする事が多く、 肉眼的血尿の多くが上気道感染、過労、 寒冷の影響で認められておりま

       す。 病気が進行してきますと、変型赤血球が多数出現する様になりますが、この段階では、 病気はかなり悪

       化している状態になります。





     
§3  IgA腎症の原因/IgA腎症/尿と病気


       日本人に多いIgA腎症の明確な原因は、分かっておりませんが、IgA(免疫グロブリンA)の免疫複合体(抗原、

       抗体の結合物)や凝集変性IgA、補体のC3という物質が糸球体に沈着し、炎症を起こす事は分かっています。

       (炎症により、糸球体のろ過能力に障害をうけて、 ろ過能が落ちてしまい、腎機能が低下する事がいえます。)

       一般には、20年程度の時間をかけて、 約40%の人が透析に至るといわれます。(細菌、ウィルス、食物抗原、

       自己免疫などの原因抗原により免疫反応が起きたり、 遺伝的にIgA産生の亢進状態により、過剰な免疫反応

       を生じるためとされ、この際に原因抗原とIgA型免疫複合体を形成し、糸球体に沈着する事でIgA腎症を発症し

       てしまうと考えられております。)


       IgA腎症の憎悪要因としては@高度蛋白尿(1g/日以上)A高血圧B腎生検時の腎機能低下例C男性D中高

       年(35歳以上)発症例 E高蛋白食の持続摂取F組織障害としてメサンギウム細胞増殖・糸球体の硝子化/硬

       化・ボーマン嚢との癒着・半月体形成・尿細管萎縮・ 間質への細胞侵潤/間質繊維化の高度なもの(糸球体機

       能模式図も御参考にご覧下さい。)


       * IgA腎症は糸球体の毛細血管に囲まれたメサンギウム領域という部位に病変を確認する事ができます。





     
§4  IgA腎症の検査/IgA腎症/尿と病気


       IgA腎症は症状の希薄な疾患です。尿検査で顕微鏡的血尿(80%以上の症例で確認される)や、蛋白尿が

       確認された場合には血液検査で、 より詳しく確認する事が必要です。 蛋白尿は80%の症例で持続性の蛋

       白尿が認められており、 ネフローゼ症候群を呈するケースは5%程度とまれとされております。血清尿素窒

       血清クレアチニンクレアチニン・クリアランス、血清IgA(高値を約半数に認めます。診断基準値は血液

       検査315mg/dL以上)を確認します。IgA腎症を確定するためには腎生検が必要になります。(光学顕微鏡で

       は糸球体に沈着したIgAを特定、確認します。また、半球状のPAS陽性沈着物を高頻度に確認します。さら

       に糸球体の硬化、半月体の形成、糸球体とボーマン嚢殿癒着なども認める事が少なくないとされております。

       )確定診断では、 光学顕微鏡所見として巣状分節性から瀰漫せい全節性までのメサンギウム増殖性変化を

       認める、 蛍光抗体法or酵素抗体法所見として、瀰漫性にメサンギウム領域を主体とするIgAの顆粒状沈着を

       認める、 電子顕微鏡所見としてメサンギウム基質内(特にパラメサンギウム領域を中心とする高電子密度物

       質の沈着を認めるなど腎生検による糸球体の観察によります。(糸球体機能模式図も御参考にご覧下さい。)





     
§5  IgA腎症の治療/IgA腎症/尿と病気


       長い病歴の人は末期の腎不全に至るケースが多く(約40%)、こうなりますと透析療法を開始する事になりま

       す。末期の腎不全の場合、 腎移植の選択肢もありますが、IgA腎症の場合は、移植した腎臓にもIgA腎症を

       発症する事がある事を理解しておく必要もあります。従いまして(末期の腎不全に至らせないために)、進行を

       抑える事がIgA腎症では大切になります。 IgA腎症は免疫系の疾患ですので、免疫反応、炎症を抑制するた

       めに、薬物療法として副腎皮質ホルモン(ステロイド)が用いられております。初期には抗血小板薬の投与、ス

       テロイドのパルス療法、扁桃摘出術などを、 また、症状の進行に伴ない、 糸球体内に血栓が出来易くなるを

       防止する目的で、抗凝固薬(ヘパリン、ワーファリンなど)も用いられます。 アンジオテンシン(ACE)阻害薬や

       アンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)などの投与も行います。IgA腎症は合併症として、高血圧や脂質異

       常症の人によく確認されます。これは腎臓の血管を障害したり、血液の粘度が高まるために腎臓への血流は

       悪くなり、症状を悪化させる要因になります。 その対策として、高血圧にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬

       やアンジオテンシンU受容体拮抗薬で、血圧を降下させます。(糸球体内圧の上昇も抑制する)


       血圧コントロールを良好にする事は腎炎の進展、悪化の予防に繋がる重要な手法です。(第一選択薬として

       アンジオテンシン変換酵素ACE阻害薬が選択され、充分に降圧が得られない場合には、カルシウム拮抗薬、

       α-メチルドーパーが選択され、それでも不十分であれば、α遮断薬の併用もあります。) 脂質異常症に対し

       ては、スタチン製剤を用います。


       薬物療法、食事療法を継続する事により、完治しなくても病状が安定します。長期の療養になりますが、日常

       生活でも腎臓に負担をかけない様に、過労や睡眠不足、過重な労働、感染症などにも注意をして、症状の強

       く出ているときには安静を心がけなければなりません。病状が安定している場合でも、症状が急激に悪化する

       事があり、注意が必要です。 予後は比較的緩慢な経過を辿る為に、 従来は予後が良いと考えられておりまし

       たが、症例の約20〜30%に腎障害の進行や機能低下も確認される事から、予後良好とはいえない判断にな

       っている。





     
§6  IgA腎症関連疾患/IgA腎症/尿と病気


       
関連疾患には紫斑病性腎炎、肝性糸球体硬化症があります。


      
§6−1 紫斑病性腎炎/IgA腎症関連疾患/IgA腎症/尿と病気


       
症例の50〜70%で血清IgA値の上昇、流血中のIgA型免疫複合体(しばしばIgG型免疫複合体も検出される

       )が認められます。4〜11歳の小児に好発するシェーンライン-ヘノッホ紫斑病は下肢、臀部、背面に血小板非

       減少性紫斑を形成します。 血管炎を基盤とする多臓器疾患(消化管/疼痛性腹痛・悪心・嘔吐・時に虚血性消

       化管出血 関節/関節炎・関節痛 腎/糸球体腎炎)です。 高い頻度の
血尿(初期或いは急性増悪期に数日〜

       数週間に亘る
肉眼的血尿)が確認される事が多く、 軽快後も顕微鏡的血尿が数ヶ月〜数年に及んで持続しま

       す。 蛋白尿も糸球体に軽度〜中等度の病変を認められる場合には、持続的に確認され、高度であれば、ネフ

       ローゼ症候群、高血圧、腎機能障害も伴なう様になります。 これが時には、急速進行性糸球体腎炎型の経過

       を辿る事になる場合もあります。免疫刑抗体法で確認すると、殆んどの症例でメサンギウム領域にIgA、C3の

       瀰漫性顆粒状沈着が認められ、 電子顕微鏡ではメサンギウム領域を中心として、内皮下(時として上皮下も)

       高電子密度沈着物が認められ、上皮下の高電子密度沈着物に接する部位には、糸球体基底膜断裂も認めら

       れます。(糸球体機能模式図も御参考にご覧下さい。)紫斑病性腎炎は多くの場合には、一過性に経過する予

       後良好な疾患とされ、 その約半数が2年以内に完全寛解し、 約1/3は
蛋白尿、血尿が持続しますが、腎機能

       は正常に保たれており、 それらの多くも最終的には寛解に至ります。 全体の1/5以下ではありますが腎機能

       障害を伴ない、その一部が末期腎不全に進行してしまいます。



       成人では20%弱の症例が末期腎不全に進行し、透析療法に至り、約半数の症例で腎機能障害が残ったとい

       う報告があり、小児と同様の経過を辿るという報告とは、少し異なる経緯の報告もありますし、腎症状合併頻度

       も高駆、予後不良の傾向もありますので、注意が必要です。




      
§6−2 肝性糸球体硬化症(肝性IgA腎症)/IgA腎症関連疾患/IgA腎症/尿と病気


       
慢性肝疾患(特に肝硬変症を伴なう腎疾患)の中で糸球体にIgA優位の沈着が認められるものです。肝硬変症

       の約70%にIgA糸球体体メサンギウム領域優位の沈着があります。肝性糸球体硬化症は糸球体病変が存在

       しているのにも関わらず、
蛋白尿や血尿などが認められない場合が多く、 約75%の症例は肝疾患によるもの

       以外の異常が認められない特徴があります。 殆んどは
軽度の異常尿が確認される程度で、 肉眼的血尿や腎

       機能低下を示す症例も少ない。
肝性糸球体硬化症の場合、予後は肝硬変のウェイトが大きく、 腎症自体の予

       後は不明です。
















     
* 補体;血清に含まれる蛋白質。免疫反応で重要な働きをする。(免疫活性を促がす蛋白質成分)



     
* 免疫グロブリン抗体と、抗体の機能をもつ蛋白質で、5種類(IgG、IgM、IgA、IgD、IgE)存在し

     ます。夫々は独自にH鎖(μ、δ、γ、α、ε)を持っています。腸管や粘膜上にもあり、感染症などから守る役

     割を果たします。IgAは血液や外分泌の中に含まれております。免疫グロブリンの基本的な構造の単位は同一

     の2本のL鎖(軽鎖)と同一の2本のH鎖(重鎖)からなります。


     
* 抗体;ウィルスや細菌毒素を不活性化して、侵入してきた微生物、寄生虫を殺す補体や種々の白血球により、

     感染に対して防御機能を現す。


     
* 半月体;糸球体ヘンレ係蹄壁外、ボーマン嚢腔内に増殖する病変で、細胞性半月体(上皮細胞の増殖や炎症

     細胞/マクロファージ、リンパ球、多型白血病など の浸潤から成る)、線維細胞性半月体(細胞性半月体に基底

     膜様物質や膠原線維の増生が加わったもの)、 線維性半月体(線維細胞性半月体の細胞成分が消失し、基底

     膜様物質や膠原線維が主体)に分類されます。













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